1:俺とかつての学友 - 1/3

「卒業おめでとう!」

 学校でそんな言葉を交わしてから、俺が本格的に実家の鉄砲鍛冶に注力し始めて三度目の春がやってきた。
 我が家はこの街に代々続く鉄砲鍛冶屋で、自分はそこの五代目になる予定である。

 予定であるっていうのは、まだ俺が正式に後を継いだわけじゃないからだ。
 馬鹿みたいに元気な親父を見ている限り、俺の本格的な出番は何十年も先で間違いねぇ。それでも、親父は後を継がせる気満々なのか、日々鍛冶のノウハウってやつを仕込んできやがる。
 元々手先は器用な方だし、モノ作りが好きな自分としてはこの三年間はこの上なく充実した日々だったと思う。特に不満も無いし、別にこの先ずっとこの生活が続くことに何の不自由も感じない。
 鉄砲鍛冶職人としてはまだまだ駆け出しで、学んだ知識を自分独自のスキルとしては昇華しきれていない部分も多いが、それでも表面上ある程度のことは覚えた。

 そんなある日。かつての学友――いや、悪友と食事に行った時のことだった。